お盆も毎日、片道一時間かけてお見舞いに通いました。
原動力になったのは、中三の長女。これまで部活が忙しくてなかなか見舞いにこれなかった彼女。
コンクールが終わり、部活が休みになると、毎日のように「じいちゃんのところに行こう」と言ってくれました。
毎日行かねば…という気持ちから、毎日行こうね、という楽しみを含んだ気持ちになり、当然父も喜んでくれるので私の疲れも随分吹っ飛びました。
ところが、お盆が明けてまた仕事や娘の送迎の合間を一人で病院通いすることに。
バタバタが続いて、自分の時間がいつ取れるのかわからなかったので、今日だけはお見舞い休んじゃおうかな…と思った矢先に、久しぶりの父からのLINE!
「もすかれ…バーガーかっって来てくれる?」
半年前からの原因不明の右手のマヒで、うまく入力できず誤字は当たり前。
モス?モスバーガーのことよね!?
いやあ、もう、瞬間的に病院に向けて車を走らせていました。確か近くにモスバーガーがあったな。よし、買っていこう!
入院以来一週間以上、口からものを食べようとせず、点滴だけで命を繋いでいる状態の父には、なんでもいいから好きなものを食べさせてほしいと医師から言われていました。その父が、自ら食べたいものを指定してきた!
それがこんなに嬉しいことだなんて。
モスバーガーに到着し、目に入ってきたのは大きなポスター。
<モスカレーバーガー>って書いてある。
あ!!
さては、CMで見て食べたくなったんだな!!「もすかれ…バーガー」ってモスカレーバーガーって書きたかったんだ!!なるほど納得。
病床でCMに心躍らされて、必死にLINEしている姿を想像すると微笑ましくて、一刻も早く食べさせてあげたいと思いました。いやしかし、待てよ。
今の状態だと、ハンバーガーを一つ完食するとは思えない。
そこで、
「モスカレーバーガーを一つ持ち帰りで。
入院中の家族が所望するので買いに来たのですが、一度に食べきれると思えないので、少しずつ食べれるように4等分にしてもらうことは可能ですか?」
と、ダメもとで尋ねてみました。
バイトらしき女の子が笑顔で「お待ちください」と裏に尋ねに行きました。
戻ってきた別のスタッフが「ソースがこぼれ出るかもしれませんがよろしいでしょうか」「もちろん結構です」
今度は違うスタッフが「形が崩れるかもしれませんがよろしいでしょうか」「もちろん構いません」「努力しますね!」「ありがとうございます」
少し待ち時間。
ああ、余計なこと頼んじゃったかな。
そんなことを思っていると、「お待たせしました」と持ってきてくれました。
きれいに四等分にしたハンバーガーにはつまようじが刺してあって形が崩れないように工夫してくれました。
ソースがこぼれにくいよう、いつもの袋ではなくホットドック用の長細い紙ケースに並べてくれています。
「いかがでしょうか」とほほ笑むスタッフの姿に、目頭が熱くなりました。
「ありがとうございます。すごくすごく喜ぶと思います!!!」
病室でハンバーガーを見た父は、一瞬「おや?」という表情をしたものの「これこれ。食べたくなっちゃってね」とすぐに大口を開けて「あーん」と待機。笑
4等分してもらったおかげで、一番おいしい真ん中部分からガブリ。
唇についたソースを舌で舐めながら、さらにもう一口と言わんばかりに「あーん」。おおおおお!食べれるじゃないか!
結局三口ほど食べて、またすやすやと寝てしまいました。
満足したんだねえ。
残りの3ピースのモスカレーバーガーは、帰りの車内で泣きながら食べました。父を知らない人もこうやって父を応援してくれたんだって思うと嬉しくて。
モスバーガー日赤通り店のスタッフさん、ありがとうございました。