前回からのつづき。
駅に到着すると、今回のお話のきっかけをくれた会社の社長さんと、民宿の女将さんが迎えに来てくれてました。な…なんというVIP待遇!いや、本当にバックパッカーしてたときにはこんなことはあり得なかったので!!
社長さんと女将さんが駅で「あ!」なんて言って、私を挟んで鉢合わせしてすぐに「じゃ、今日は俺が案内するから、明日お願いね」「分かった!じゃあ、私はこのトランクを宿に持ってく。夕食準備を張りきってやっとくから!」とまあ、あれよあれよとノープランの旅がプランが決まり、私は社長の車に乗り換えて、気が付けば只見の田子倉ダム。
ダムに消えた田子倉地区の話や、昭和38年ごろから約10年ほどダム建設でバブルだった頃の話。静かだった山間の町に、多くの人が働きにやってきて、映画館やパチンコ、スナックができて、日本一貯蓄額の多かった郵便局や分校の話。ダム建設に使われた只見川の砂の話。おまけに「この家は一見雰囲気いいけど、実は売りに出ている」とか「このキャンプ場のリニューアルにこんだけ予算組んでるのどう思う?」なんて話は、ツアーガイドは絶対にしないな。笑どれもこれも興味深くて、もっともっと只見を知りたくなってくる。
そしてタクシーの運転手さんに聞いた「只見の屋根」を見て、雪を屋根から落とすための知恵を知り、豪雪から庭木を守るための知恵を見ました。何か月もかけて木の周りに柵をするなんてなんという重労働!たくさんの人に出会い、たくさんのことを教えてもらいました。町の長老は、どんな格好をしても絵になる!
なにより私が嬉しかったのは、最初にLadybugを探し当ててくれて、只見のことを魅力的にメールでお伝えしてくれた女性に会えたこと。(ごめんなさい、確認もせずに顔出ししちゃった!)
ペンフレンドに初めて会う感覚ってこんなかなー。(例えが昭和すぎるw)
只見が冬から春に季節が変わろうとしていることを文章で教えてくれた人。熊本と只見が意外な繋がりがあったことを教えてくれた人。
いったいどんな人なんだろうって思っていたけれど、まさか年齢が近いこんなきれいな女性だったとは!!
最初は緊張したけれど、すぐにワクワクの方が勝っちゃて、一方的に想いばかりを伝えていたような気がします。ああ、もう嬉しくて嬉しくて!
この日の夜は民宿で一人夕食の予定が、宿の女将さんが気を利かせてその女性を夕食に招いてくれたおかげで、楽しいかけがえのない時間となりました。こうやって親睦を深めて、その土地の空気を吸って、この季節の空を眺めて、それをすべて石鹸に落とし込めたら。
トラベルソーパー。そんな言葉がよぎった夜。
*
長い一日でした。
只見に向かう列車に乗ったのが随分前のことのよう。
列車の中での不安… 下調べをせず、知らない町に飛び込むことが果たしていいことなのかどうか。
単なる旅ならまだしも、今回は少なからずLadybugとして訪れるうえでそれは正しいことなのかどうか。
列車に揺られながら、友人にそんなことをLINEでつぶやいたところ、夜になって返事が来てました。
ちょうど今読んでいる本に出てきた一文だとか。
<何も決めずに出た旅は、驚きに満ち溢れている。
そして、結果として作り上げられたものはずっと豊かなものだ。
究極的には、目的意識など持たないことが私たちの目的であるべきだ。
達成しようというやる気は重要だが、ゴールそのものを見つけるのではなく、何に焦点を定めるべきかを考えよう。
ー中略ー
とにかく歩き出すのだ。>
そうだ。これでいいんだ。
遠慮なしに「花泉」の一升瓶を手酌で呑んで、一日目の夜が更けていきました。